■ 2008年8月までのトキ訓練状況(まとめ)
野生復帰ステーション「順化ケージ」では、自然環境に近い大きなケージの中で、トキたちが野生復帰にむけての訓練を行っています。
2007年7月に5羽が、2008年2月には追加で10羽のトキが訓練を開始しました。
2008年の繁殖期にはケージ内で2羽のヒナが生まれ、2008年8月現在、順化ケージには17羽のトキがいます。(オス7羽、メス8羽、
幼鳥2羽)
訓練を始めて、最初の5羽は1年以上、追加の10羽は半年が経ちました。どのトキも健康状態は良好です。
2008年8月4日に行われたトキ飼育繁殖野生復帰合同専門家会合で、環境省からトキの訓練の経過と観察報告がされましたので紹介します。
■訓練の経過■
●食べること
どのトキも、エサを探し、捕らえて、食べる力は十分についています。
順化ケージには、池、湿地、水田、草地、水路、江など、さまざまな環境がありますが、トキは全域にわたってエサをとっています。
陸生生物はたいへん丁寧に探索していて、コオロギ、ミミズなどもよく捕獲して食べています。
訓練では、多様なエサを食べる機会を与えようと、タナゴ、フナ、ザリガニ、スジエビなど佐渡にいる生きものをケージ内に入れました。トキは、
水中ですばやい動きをする魚は捕まえることがむずかしいようで、タナゴは少し捕獲するのが苦手なようです。

(8月エサの探索 画像提供:環境省)
トキがエサを探索する場所は季節によって変化しました。夏は草地、冬は池で多くなります。
草地での探索時間が最も多くなるのは8月で、探索時間全体の70パーセントを越えました。
冬は陸上の生きものが激減するため、池での採餌が多くなります。2月には池での探索時間が最も多くなり、
探索時間全体の90パーセント近くになりました。冬のあいだは、池の中でも水が流れていて「凍結しない」水路がよく利用されました。
春には再び昆虫類が増え、陸上での探索時間が多くなっています。

(1月エサの探索 画像提供:環境省)
●飛ぶこと
最初に訓練を開始したトキたちは、5分以上の飛翔も見られ、筋力が養われたようすです。
飛翔の軌跡も安定していることから、ケージ内においての飛翔能力は十分に備わったと言えます。
追加したトキは、飛翔が上手なものと未熟なものがいます。何かに驚いてパニックになりやすいトキは、飛翔の軌跡が直線的だったり、
左右にふらついたりすることがあります。

(画像提供:環境省)
●天敵回避
トビやカラスなどがケージ周辺に出現すると、トキは注視をし、警戒の態勢となります。
2008年7月の訓練では、トキの天敵と想定される鳥(オオタカやカラス)の模型を見せることや、さまざまな音(人の声、ダイサギ、
オオタカ、トビ、カラス、トキの警戒音)を聞かせることを行いました。
その結果、模型などの動きに比べるとトキの音への反応は弱いことが分かりました。唯一、カラスの声を聞かせたときは、
2羽のトキが高い木の頂上にとまって周囲を見渡し、他のトキも注視するという警戒態勢をとりました。
今回の訓練にかぎらず、トキは「突然出現する」「激しく動く」ものにはすべて強い反応を示します。

(画像提供:環境省)
●人との共生訓練
トキが人に過度に反応しないよう、ケージ内で観察や草刈りなどを行い、ある程度人の存在に慣れさせる「人との共生訓練」を行っています。
先に訓練を始めた5羽は、ある程度距離があれば、飼育員や観察員に対して落ち着きを保っています。追加したトキは、
繁殖期が終わった2008年7月から本格的に訓練を開始しました。現時点では、人に対して過敏に反応するトキと、
ある程度落ち着きを保っているトキとがいます。
■その他観察・調査■
●ねぐらにする木
トキは、木の種類によらず、枝ぶりのよい木をねぐらに選びます。
非繁殖期は、全羽が同じ木をねぐらにしていて、日没になるといつも決まった木々に集まります。繁殖期には、
それぞれ営巣した木をねぐらとしていました。
●稲の踏みつけ状況
2008年5月8日に順化ケージ内の水田に田植えをしました。株間は25センチで、当初20センチだった苗が、
7月末で80センチに成長しています。
調査の結果、すべてのトキが稲を植えた田んぼでエサの探索をしていました。トキが田んぼを歩いた歩数のうち、
引っ掛け程度をふくめ稲株を踏みつけた回数は、全歩数うち約1%でした。
稲の草丈がトキの背丈を越えていますが、現在もトキは稲株の間に入ってエサの探索をしています。
2008年9月25日に行われるトキ試験放鳥では、現在順化訓練を受けているトキ17羽のうち、10羽程度が選ばれ、
放鳥される予定です。
野生復帰ステーションでは引き続き、トキの健康状態に注意し、訓練と観察を継続していきます。
