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■ 佐渡トキ保護センターのトキの繁殖 ヒナ巣立ちと成長(6月~)

6月はじめ、巣の中で40日ほど育ったヒナは巣立ちを迎えます。今月はヒナの巣立ちと、 佐渡トキ保護センターの仕事について紹介します。お話しは佐渡トキ保護センターの和食雄一獣医師です。

●巣立ちは枝を行ったり来たり
人工繁殖のヒナの場合、ヒナが保温室に隣接する「飛翔室」のとまり木にとまるようになったら巣立ちと言います。 巣立ちしたヒナは大人のケージに移動させます。
自然繁殖のヒナの場合はヒナの体が巣から出たら巣立ちと判断します。ヒナは35~40日齢になると巣から出て、 巣が掛かっているとまり木を歩くようになります。最初、ヒナはとまり木を行ったり来たりします。個体差がありますが、 それから5日前後で羽ばたいて地面に降りるようになります。今度は巣と地面を行き来して、飛ぶ練習を始めます。

幼鳥群れ
(幼鳥の群れ 写真:佐渡トキ保護センター)

●親トキの子育ても終盤に
巣立ちのころになると、親トキの子育ての忙しさも終盤です。エサを与える回数は、ヒナが20日齢くらいのときに最も多くなり、 その後はそれほど変わらなくなります。
ヒナが巣の外にフンをするようになると、親トキは巣材の交換をしなくてもよくなります。人工繁殖の場合は、 ヒナが乗っている容器が小さいので、ふ化してすぐに容器の外にフンができるヒナもいます。ヒナは、はって後ずさりし、巣の外にフンをします。 自然繁殖の場合は巣が大きいので、巣外にフンをするのはヒナがもう少し成長してからです。
親トキは巣立ったヒナと、まだ巣にいるヒナの両方にエサを運びますが、ヒナが全員巣立てば子育てはほぼ終わりです。

●自力でエサとり
地面に降りたヒナは、自力でエサをとろうとします。 早いヒナだと、地面に降りるようになってすぐエサをとるヒナもいます。その一方で、巣立ちから1ヶ月経っても、幼いときのように鳴き、 口を開けてエサをねだっているヒナもいます。ヒナは巣立ちしてもしばらくは巣に戻り、親からエサをもらったり、巣で寝ます。
とまり木で寝られるようになったヒナでも、巣に戻って寝ることがあります。巣だと座ることができるので、楽なのかもしれません。 大人のトキの場合、病気のとき以外は地面に座ることはありませんが、ヒナだと地面に座ることもあります。

●失敗しながら学びます
ヒナが巣立ちをすると、親トキもヒナも個別に行動します。しかし、エサのとり方や、水浴び、飛び方などを、 ヒナは親トキの動きを見て覚えたり、親を見ることで上手になっていくと考えられます。
最初のうち、ヒナの飛び方はおぼつきません。旋回や着地がうまくいかず、周囲にぶつかったり、木にとまろうとして失敗し、 枝にからまっていることがよくあります。
そんなときは獣医師として心配で助けたいのですが、人間が近づくと一層暴れて怪我をすることがあるので、見守るしかありません。


●事故や突然死に気を使っています 
巣立ちから10日ほどたったころ、健康だったヒナが突然、翌朝死んでいたことがこれまでにあります。心臓麻痺のような状態ですが、 原因は不明です。
10日を過ぎ、ヒナが成長するにつれ繁殖期に心配する事故が減っていきます。
ヒナが巣立ちを迎えるころになると、繁殖期の期間、緊張していた佐渡トキ保護センターの職員たちにもようやく安心感が出てきます。
しかし、ヒナは人間や周りの状況に慣れていないため、親トキが驚いたりほかのトキがバタバタと羽ばたく音を聞くと、恐怖心から飛び立ちます。 驚いて飛んだヒナはケージにぶつかってケガをすることがあります。
佐渡トキ保護センターでは、巣立ちしたヒナは成鳥と同じように飼育しますが、ヒナの巣立ち後しばらくは、 トキを驚かさないように気をつけています。ケージ内の掃除や草取りなどの作業は、ヒナがうまく飛べるようになる夏以降に行います。

顔がオレンジ色
(顔がオレンジ色 写真:佐渡トキ保護センター)

●ヒナの羽が替わると若鳥、 そして成鳥に
8月くらいになると、ヒナの体に生えている灰色の小さい毛が生え変わり、ヒナの見た目が白っぽくなります。秋になると、 尾羽などの大きな羽が一部生え変わります。羽は何週間もかけて決まった順番に抜けていきます。片側の羽ばかりが抜けると飛べなくなるので、 左右対称に抜けます。ヒナを正式には「幼鳥」と呼び、秋に羽が生え変わると「若鳥」と呼びます。羽は全部生え変わるわけではなく、 ヒナ特有の灰色の羽がまだ残ります。若鳥になると、体の大きさは成鳥とほとんど変わりませんが、顔の色はまだ赤くなく、オレンジ色です。 若いトキが繁殖期を迎える2歳ころまでは、成鳥との見分けがつきます。
若鳥は翌年の春にまた羽が抜け替わります。そのとき羽が全部抜け替わってトキ色になります。羽が抜け替わった若鳥を「成鳥」と呼びます。 成鳥といってもまだ繁殖はできないので、繁殖期になっても羽は真っ黒には変化しません。うっすら黒くなる程度です。

佐渡トキ保護センターで生まれた若鳥たちは、しばらくは家族同士でケージにいますが、 親ペアが次の繁殖期に入る12月前には親ペアと若鳥たちを分けます。このとき初めて若鳥を捕獲します。健康診断を行い、 血液検査をして性別を確認します。若鳥たちはその後、新たな繁殖ペアの候補、野生復帰訓練の候補として選定されます。

佐渡トキ保護センター管理棟

●トキの野生復帰と、 佐渡トキ保護センター
1999年に佐渡トキ保護センターで日本初のトキの人工繁殖が成功してから、 日本のトキの数は100羽近くになりました。現在はトキを佐渡の自然下に野生復帰させ、 生態系の中へ定着させようという取り組みがすすんでいます。一方でトキはまだまだ絶滅が心配される種の鳥です。 佐渡トキ保護センターでは今後も、健康なトキを増やし、自然下でも元気に生きるトキを繁殖させる場所として中心的役割を担っていきます。

「佐渡トキ保護センターのトキの繁殖」シリーズ終わり。
一番はじめからご覧になりたい方はこちら『繁殖期の始まり(12月~2月)』

[ 掲載日 2008年05月16日 | トキのニュース ▼ひとつ前へ戻る ▲ひとつ次へ進む ]