■ 訓練開始から2ヶ月間 トキの観察報告
トキの野生復帰に向けた訓練が始まっています。野生復帰ステーションでは訓練中のトキたちについて毎日観察が行われています。 先日2007年9月11日に開かれた野生復帰専門家会合で順化ケージ放鳥から2ヶ月間のトキたちの観察結果が報告されました。
現在、野生復帰ステーションで訓練をしているトキはオス3羽とメス2羽の計5羽です。
いずれも自然繁殖の2006年生まれで親から育てられたトキたちです。
5羽の最初の訓練は順化ケージに慣れてもらうことでした。
観察では順化ケージから離れた管理棟からモニターカメラを使っての継続的な観察のほかに、
順化ケージ近くに観察小屋を設けて観察が行われました。
今回報告された観察結果の紹介
●食べること
与えるエサはドジョウやタナゴなど、生きている水生生物です。人が現れたらエサがもらえるとか、
決まった時間にエサがもらえるとトキが条件付けされないように、
エサは順化ケージから離れたところにある給餌棟から毎回違った時間に投入しています。
食べているのが確認されたもの
魚類:ドジョウ、タナゴ、コイ
土壌にいる生物:ミミズ、バッタ、クワガタ
・昆虫は何度もくわえ直して飲み込んでいます。
・初めの頃は地面からほじくりかえしたミミズは池で一度すすいでから食べていました。最近はほとんどすすがず食べています。
・大きすぎる昆虫などはつついてみますが食べません。

(オオミズアオをつつくトキ 画像:環境省提供)
●エサ探し
・池や地面でエサを探索します。
・池よりも地面でよくエサ探しをします。池の4倍ほどの時間を地面でのエサ探しにあてています。
朝30分の観察のうち、トキが池に入ってエサ探しをする時間の平均は2~6分ほどです。
エサ探しに池に入る時間の長さはトキごとに違っており、それぞれに個性があるようです。

(虫を捕まえたトキ 画像:環境省提供)
●飛ぶこと
順化ケージ放鳥から3、4週間たつとケージにぶつからずに飛ぶようになりました。
ケージをキックしたり、ケージ前で上手に旋回します。広い順化ケージに放鳥された当初、
トキがケージを一周飛んでかえってくると息切れをしているようすでしたが、その後は、
1日に2回ほどケージを3~4周飛行するようすも見られました。
人を警戒して、パニックになって飛ぶことがあります。
とまり木については、始めのうち人工とまり木にとまることが多く、最近は順化ケージ内に植えた木にもとまるようになっています。

(左下と中央付近に飛んでいるようすが見えます 画像:環境省提供)
●トキ同士の行動(社会行動)
・枝渡し
枝渡しはトキがお互いに仲良くしようという意思表示です。観察では1羽のトキが地面で枝を拾って他のトキの側まで飛んでいき、
その後枝を互いに引いたりしているようすが見られました。
・擬交尾
オス同士23回、オスメス同士2回の擬交尾が見られました。
擬交尾はトキがトキの背中に乗って絆を深める行動です。繁殖期になるとトキのペアで頻繁に行われますが、一年を通して見られる行動です。
・ねぐら争い
夕方とまり木の上でのつつき合いを観察しました。
・水浴び
不定期で、5羽一緒に行うことが多いようです。

(画像:環境省提供)
●トキの一日の行動の割合
睡眠時間以外でのトキの活動時間割合です。
・とまり木での休憩 35%
・地面での休憩・静止 15%
(以上あわせると一日の行動の約半分が休憩の時間となります)
・地面でのエサ探し 26%
・池でのエサ探し 13%
・捕獲・食べる 1%
(エサを探し、食べるのにかける時間は一日のうち40%をしめています)
歩く(エサ探しや食べている時間以外) 5%
飛ぶ 2%
社会行動 3%

(画像:環境省提供)
●つつき合いからの発見
とまり木でのトキ同士つつき合いが行われると、片方は飛び去り、片方はその場に残ることがあります。つつき合いの結果、
5羽それぞれがどう行動したか記録をつけると、必ず飛び去るトキや、その場から離れることが少ないトキがいることが分かりました。
その場に残ることの多い順
トキの個体番号 121(オス) 116(オス) 131(オス) 133(メス) 119(メス)
この順番は5羽がとまり木にとまるときの並び方と同じことが多いようです。
順化ケージの東フェンスに近いところから
トキの個体番号 121(オス) 116(オス) 131(オス) 133(メス) 119(メス)と並ぶことが多いと観察されました。

(止まり木に4羽と、飛行して戻ってきた1羽 画像:環境省提供)
●トキ以外で観察された生きもの
・ケージの外
トビ、カラス、ハト、キセキレイ、クワガタ
トビやカラスがケージ周辺に来た時にトキは注意してそのようすを見ています。
・ケージの内
キセキレイ、シジュウカラ、メダカ、タニシ、コオロギ、ミズスマシ、ミズカマキリ
野生復帰ステーションでは、
今回の観察結果と野生復帰専門家会合で各専門家の方から出た意見をふまえて今後も訓練や調査などを行っていく予定です。
