■ 野生復帰に向けた順化訓練中のトキの様子
2007年の7月からオス3羽、メス2羽のトキが野生復帰ステーションの順化ケージで野生復帰に向けた訓練を行っています。 今回はトキが順化ケージで訓練を始めてからこれまでの様子をご紹介します。
●夏頃の様子(7~8月)
トキ保護センターで飼育されていた5羽は順化ケージにやってくるまでは餌を探し回る必要がありませんでした。
なぜなら飼育員が目の前でドジョウや人工飼料を給餌してくれていたからです。しかし、
放鳥後トキは自力で餌を探し出さなくては生きていけません。そこで採餌能力を向上させるため、順化ケージでは、
泥や水草もある池にケージの外からパイプを経由することによりドジョウなどの生きた餌を入れています。このように、
自力で餌を獲得しなくてはならない環境下におくことで、トキに餌の探し方やつかまえ方などを自発的に学習させようというわけです。
ケージに移動してから最初の1ヶ月ぐらいは、採餌範囲はケージの半分程度でしたが、2ヶ月程経つと次第に行動範囲が広がっていき、
餌も自力でとれるようになりました。

(エサの探索 写真:環境省提供)
●秋頃の様子(9~10月)
夏から秋にかけて、順化ケージ内にはコオロギなどの陸生生物が増えたため、餌探索は池だけでなく、地面や芝生でも行われるようになり、
行動範囲はさらに広がりました。また、10月からは「人との共生訓練」として、ケージ内への立ち入り、稲刈り、草刈り、観察等により、
ある程度トキを人に慣れさせる訓練を行いました。これまでトキは人を見る機会があまりなく、
時には人の姿に驚いてネットなどにぶつかってしまうことがあったため、それをできるだけ減らす、と言う意味もありました。この訓練を通じて、
トキも人の活動にだいぶ慣れたようです。また、人の側もトキとの適度な距離間や振る舞い方について学ぶことができました。

(稲刈を終えた順化ケージの田んぼ 写真:環境省提供)
●冬頃の様子(11~12月)
順化ケージでの生活は5ヶ月を過ぎ、5羽の採食場所には新しく設置した水路や江も加わりました。水草が繁茂している池も避ける様子はなく、
眼で姿を確認できなくても、上手くドジョウを探しだして食べています。地面に発生していた昆虫類が激減したため、
地面で探索をする時間は秋に比べて短くなりました。飛翔に関しては、障害物の空間配置を十分に学習し、
ネットに接触することもめったになくなりました。一回あたりの飛翔時間も延びている様子です。
今後、野生復帰に向けた訓練が十分できたかを判断するためには、採餌、飛翔、天敵回避や、他個体とのコミュニケーション(社会性)
能力を定量的に把握する必要がありますが、5羽はこの5ヶ月間で大きくその能力を伸ばしている様子です。今年の秋には、
たくましく成長したトキが佐渡の空に羽ばたく予定です。

(ねぐら・木にとまる5羽 写真:環境省提供)
12月には新たに20羽がトキ保護センターから野生復帰ステーションに移されました。 さらに鳥インフルエンザに備えた緊急措置として4羽が多摩動物園へ移送されました。
環境省関東地方環境事務所佐渡自然保護官事務所
自然保護官 岩浅有記
野生生物専門員 越田智恵子
