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■ レポート「昨秋放鳥の13番トキは今」関谷國男さん

2008年9月に放鳥されたトキの1羽(No.13メス)は、2009年10月末現在、新潟県新潟市に落ち着いてくらしています。 No.13の状況について、新潟大学理学部自然環境科学科を退職後も、新潟大学超域朱鷺プロジェクトメンバー、 新潟大学の教育支援員を継続されている関谷國男さんに紹介していただきます。

新潟市13トキ_2

「昨秋放鳥の13番トキは今」

昨年の秋に佐渡で放鳥されたトキの行動は、予想を超えたことが多く驚かされます。

放鳥後、群れの形成が思わしくない中で、雌13番のトキは雌07番と合流後、さらに雄09番とも合流し、 この3羽は国仲平野を中心に行動をはじめました。今年1月に入り間もない頃からほぼ2カ月間で、小さくても雌雄を含む群れは、その後の番 (つがい)形成に繋がると期待されていました。

期待に反し、この13番は番を形成することなく、3月10日突然単独で海を渡り村上市に現れました。その後、 おおよそ半月経過して南下、新潟市内の水田に移動しました。3月の末にはここから再び佐渡に戻り、 島内に残る3羽の雄とそれぞれ時期をずらして会いました。お気に入りの雄と出会えなかったのか6月3日には再び海を越え上越市に。
本土に再度移動してからも活発に行動し、新潟市西蒲区の畑で見つかったのが7月1日、その半月後には新潟市西区の市街地内の松林に塒 (ねぐら)を構えました。
休日などは200人を越える多くの見物人が集まる頭上を繰り返し旋回し松林の塒に入ります。
この場所の何が13番にとって憩い・癒しとなるのでしょうか。この塒からは佐渡島がよく見えます。上空の夕焼けは美しく、 飛翔は佐渡と重なることもあります。
見物人に圧倒され別の林で塒を取ったこともありましたが、台風の時も移動することなく3カ月半以上経過しました。
毎晩13番は何を考えて塒で過ごすのでしょうか。
驚くことに、13番にとってお気に入りのこの位置は10m以内の目の前を人、自転車、車が通る賑やかなところです。

餌場は数キロ離れた水田が中心で今はほとんど水がありません。
いろいろ場所を変えましたが最近は定着しています。
カエル、昆虫、ミミズ、ザリガニが主食のようですが、さほど豊かな餌場とは思えません。
タニシが多い水田も近くにありましたが、採餌しているところはなかなか見つけられていません。

新潟市13トキ

11月3日は今までになく冷え込み、大佐渡の山々に初冠雪、新潟平野の周囲の山々にも白いものが見えました。
この日、13番トキの餌場を見てまわったところ、熱心に採餌する姿が見られました。
夕方4時40分を少し過ぎた頃、採餌を切り上げ塒方向に飛び去りました。
塒から800m程離れた林で8分ほど休憩し、お気に入りの塒に向いました。
塒に近づくと見慣れない旋回を始めました。
上昇気流を捕らえ、羽ばたくことなくぐんぐんと上空に上がり、その姿はどんどん小さくなります。位置的には塒の上空を、 わずか小さく羽ばたいても翼はのばしたままで、トビとよく似た飛翔です。
おおよそ4分間の旋回のあと徐々に降り、繰り返し鳴きながらいつもと同じ塒に入りました。丁度日没時の5時でした。
この日も塒の位置から佐渡がよく見えました。
上昇気流に乗った上空からの眺めの中、どんな思いが浮かんだでしょうか。
渡りをする鳥は上昇気流を捕らえ上空の風を利用し移動することがあります。
そろそろ冬型の季節風が強くなり、佐渡に戻るのには厳しいと躊躇(ちゅうちょ)したのかもしれません。

文・写真/関谷國男

[ 掲載日 2009年11月10日 | 読みもの ▼ひとつ前へ戻る ▲ひとつ次へ進む ]