TOP >> 読みもの >> 「トキを見た!」地域の人の声-新穂地区 佐渡トキの田んぼを守る会 Aさん- ▼戻る▲進む

■ 「トキを見た!」地域の人の声-新穂地区 佐渡トキの田んぼを守る会 Aさん-

9月に放鳥されたトキは、佐渡や新潟のいろいろな地区を訪れています。
トキを見たときのお話しを、地域の人に聞きました。
(聞き取り:佐渡トキファンクラブ)

●新穂地区 佐渡トキの田んぼを守る会 Aさん
(「トキが落ち着いて暮らせるように、静かにしておいて欲しい」とのAさんの希望により、匿名とさせていただきました)

2008年10月26日に、放鳥されたトキの1羽が、私のうちの田んぼでエサをとっていました。それから3週間近くのあいだ、 毎日夕方になるとエサを食べに来ています。
トキがエサをとっている田んぼは、環境に配慮した米作りをしている田んぼです。私が所属している「佐渡トキの田んぼを守る会」は、 7年前の2001年度に7人の農家がメンバーとなって設立しました。人に安全で、 トキがすみやすいお米作りをすることを目指して取り組んできました。

田んぼを歩くトキ
(Aさんの田んぼに降りたトキ 写真提供:Aさん)

佐渡トキの田んぼを守る会は、「生きものを育む農法」を行っています。生きものが増えるように、田んぼを耕さない「不耕起栽培」をしたり、 化学肥料や農薬は使用を減らしたり、まったく使用しないでお米作りをしています。また、田んぼの一部に1年を通して水を溜めておける「江」 をつくったり、通常は田んぼに水を入れない冬の期間に田んぼに水を張る「冬季湛水」などをしています。こうした方法は、 田んぼを拠点に生活する水辺の生きものが、田んぼを乾かす期間に関わりなく、1年を通して生きられるように行っています。

小さな生きものたちが暮らせる田んぼで穫れたお米は、人間が食べても安全です。さまざまな種類の生きものがたくさんいる田んぼは、 トキにとって安全なエサが豊富にあるよい環境です。そして、人にとっても、ほかの動物たちにとっても、豊かでよい環境といえます。
私が環境保全型農業をする理由は、人によい米作りをしたいからです。環境は、山、川、田んぼ、街、海…と全部がつながって循環しているので、 どこかが汚染されれば次々に影響します。私たちが関わる田んぼは、食べものをつくる場としてだけでなく、環境の一部を担っています。 人によいものをつくるなら、環境保全を行うことが必要です。
2008年度には、佐渡市がトキとの共生にむけて環境保全型栽培を行ったお米を認証する「朱鷺と暮らす郷」認証制度をつくり、 そのなかで生きものを育む農法を推奨しています。
佐渡トキの田んぼを守る会で生きものを育む農法を始めてから、田んぼに以前は少なかった、メダカ、ドジョウ、フナ、 イトミミズなどの生きものが目を見張るほど増えました。

イトトンボ
(春の田んぼにて イトトンボ)

トキが田んぼに来たときの感想は「来るべきところに来た」という気持ちです。 佐渡トキの田んぼを守る会の立ち上げから一緒に取り組んでいる息子や、家族みんな、佐渡トキの田んぼを守る会のメンバーも、 トキが来たことを喜んでいます。
先日、会の代表が田んぼに飛来しているトキの写真を持って、東京都世田谷区にある中学校に行きました。その学校の子どもたちは、 私たちが作ったお米を学校給食で食べています。

草取りツアー
(草取りツアー 草取りの説明)

環境を守る農業を広げるには、農家だけではなく、消費者との理解と協力、それをすすめるための交流が必要です。 佐渡トキの田んぼを守る会では、東京のNPO団体を受け入れて、毎年、田んぼの草取り体験ツアーや、田んぼの生きもの調査、 農家民泊などを行っています。消費者との交流するなかで、実際に草取り作業を助けてもらったり、私たちのお米作りに理解や信頼を得られます。 この協力が、私たちがお米を作り続ける大きな励みになっています。
お米作りは、環境に配慮するだけでなく、おいしいお米をつくることが大切です。「米・食味鑑定士協会」が主催するお米の味を競う国際大会 「米食味鑑定コンクール」では、佐渡トキの田んぼを守る会のメンバーが出品した環境保全型のお米が、2008年度の金賞を受賞しました。
農薬を減らして行う米作りには課題もあります。除草に労力がかかることです。田んぼに生えた雑草は、 人が田んぼの中に入って手作業で抜くので大変です。今後はこの課題をクリアして、 環境保全型農業が佐渡島内全域に広まってほしいと考えています。

飛翔トキ
(写真提供:Aさん)

私が子どものころ、十数羽のトキがこの辺りの地域を飛んでいました。何十年ぶりに見る自然の中のトキは、やはり美しいです。 トキが田んぼに来るようになって、1ヶ月近くが経ち、本格的な冬が来ます。水田にはもう生きものがいないのではないかと心配しています。 冬も水が凍らない湧き水が出ている田んぼを確保するとか、できるだけエサの豊富な環境を作ってあげるとか、 トキのために手を尽くせるものは尽くしてやって、トキたちに無事に冬を越えて欲しいという気持ちです。

[ 掲載日 2008年12月05日 | 読みもの ▼ひとつ前へ戻る ▲ひとつ次へ進む ]