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■ 寄稿「筏(イカダ)のる鳥のらぬ鳥」近辻宏帰

近辻宏帰さんから、加茂湖の鳥たちについて寄稿していただきました。

「筏のる鳥のらぬ鳥」
文・写真/近辻宏帰(元佐渡トキ保護センター長、財団法人日本鳥類保護連盟参与)

※どの写真も、クリックすると大きくご覧いただけます。
加茂湖風景2
(加茂湖風景)

プロローグ
かって、佐渡を訪ねた文人墨客など、加茂湖の風光を愛で、詩歌を詠み、紀行文を記したと聞きます。今、両津港に着いた旅客は、 湖を一顧だにしないで、ほかの観光の地を目指して行きます。なにしろ、海抜ゼロメートル、 明治期に開削された水路で両津湾に直結する汽水湖で、島民でさえ海の一部だと認識しているふしも見受けられます。
航空写真を見ると、北西側の湖岸は入り江状で屈曲にとみ、南東側のなだらかなラインと好対照をなし、見ようによっては、 牡蠣殻の姿を彷彿とさせます。また、冬の加茂湖は、文字通り鴨(カモ)湖となります。毎年、1月中旬に県下一斉に実施される、ガン・カモ・ ハクチョウ調査のカモ部門では、個体数(4000羽前後)は5指に入り、種類数は15種前後で、トップを飾っています。
点在するカキ養殖筏と、それを利用する水鳥たちの織りなす鳥景色は、現代の加茂湖の風物詩と言っていいでしょう。

加茂湖で憩うカワウとカモたち
(加茂湖で憩うカワウとカモたち)

筏のる鳥のらぬ鳥
早くから私は、カキ養殖筏(いかだ)に乗る鳥に注目してきました。モウソウ竹を組み合わせた筏の水面下では、 垂下したロープ沿いに牡蠣がみっしりと生育しています。わずか40平方メートルほどの筏上には、カモをはじめ水鳥、水辺の鳥たちの憩う姿が、 日常的に見ることができます。休息ポーズの鳥たちが多く、湖畔からの鳥観察には初心者にもうってつけです。筏にのる鳥を観察していくうちに、 鳥たちの筏利用に三要素があることに気付きました。

1、休息及び待機場所
2、一時(緊急)避難場所
3、採餌場所

休息利用は、カモ類(主にマガモ属)、ウ類、カモメ・アジサシ類に顕著です。
避難場所は、サギ類、シギ類が中心です。
アオサギ、ハマシギ、ウズラシギ、ハクセキレイなど、採餌場所としての利用が見られました。もちろん、 これら三要素が複合しているケースも多く、鳥たちによって、多様に利用されているのがうかがわれます。

壊れたイカダの上で休息中の、オナガガモとカワウ
(壊れた筏で休息中の、オナガガモとカワウ)

私個人の観察メモをひもとくと、58種の鳥が筏を利用しています。同様に、加茂湖とその周辺の鳥の観察種は、166種になります。実に35% 、三分の一の鳥が、筏利用をしているのが判りました。

水鳥・水辺の鳥の筏利用率

グループ(類)

加茂湖周辺(数)

筏上(数)

利用率(%)

カイツブリ

5

0

0

3

3

100

サギ

10

8

80

ガン・カモ・ハクチョウ

23

18

78

ツル

2

0

0

クイナ科

2

1

50

チドリ

8

0

0

シギ

23

8

35

カモメ・アジサシ

12

8

67


表を見ると、ウ、サギ、ガン・カモ・ハクチョウ、カモメ・アジサシが高利用率を示しています。一方、カイツブリ、ツル、チドリは皆無です。 「筏のる鳥のらぬ鳥」は、この表で明らかになりました。筏を使用しないグループは、通常木の枝に止まらない鳥たちです。
では、せまい空間でのグループ同士での相性はどうか調べてみましたが、高利用率グループは、羽根があればみな兄弟とばかり、 嗜好性は認められませんでした。いずれも、群れ度の高いグループでもあり、お互いかたわらにいても気にならないのでしょう。 ちなみに同一筏上で最も多くの種類を観察したのは、1996年4月17日、潟上地区の筏上の9種(25羽)でした。マガモ(1♂)、コガモ (2♂2♀)、ヨシガモ(1♂1♀)、オカヨシガモ(2♂2♀)ヒドリガモ(2♂2♀)、シマアジ(3♂)、ホシハジロ(1♂)  以上カモ類7種
ハマシギ(3)、ウミネコ(2)。大変なにぎわいでした。

牡蠣殻山のウミネコとユリカモメ
(牡蠣殻の上にのるウミネコ〈左〉とユリカモメ)

筏のる鳥のらぬ鳥への関心は、加茂湖畔での鳥観察の興味のひとつで、つい人情から、あの鳥ものっけたい、この鳥ものるといいなぁ… の心境になってきます。1996年4月、1羽のコクガンを見かけました。筏の周りを遊泳、時おり筏を見上げ乗りたい素振りを見せていました。 30~40分後ようやく筏にコクガンが上がった時、思わず喝采をあげました。

 

ハシビロガモ
(ハシビロガモ)

エピローグ
加茂湖のカキ養殖筏は、水鳥、水辺の鳥たちにとって、 重要な生息場所の一部となっていることが、理解されたと思います。その筏は、 漁業者にとって大切な生産の場であることは言うまでもありません。船外機つきの小船が筏のそばを通り過ぎても、鳥たちは、 ほとんど反応を示しません。筏にいる鳥たちを迷惑がる漁師さんの姿を、ついぞ見たことはありません。

加茂湖風景
(加茂湖風景)

佐渡は今、トキの野生復帰、再導入に沸き立っています。トキと人との共生を目指した夢のある取り組みです。 加茂湖ではそのお手本となるように自然な姿で、鳥と人との共生風景が見られています。
昨夏から、佐渡に滞在しているコウノトリが、筏に止まったとの伝聞もあります。 トキ科のヘラサギもしばしば休息の場所に利用しているのを観察しました。昨秋、試験放鳥されたトキも加茂湖周辺に生息している個体がいます。 いつの日か、ちょっぴり勇気のあるトキが、筏にのる鳥の仲間入りをしてくれることを、ひそかに期待している私です。トキが、 人との共生ばかりでなく、佐渡、加茂湖の鳥たちに認知されたあかしとなるからです。
加茂湖は、県下一の面積を誇る鳥影の濃い立派な湖です。

 

筏のる鳥リスト(19675月~20091月)

カワウ

オカヨシガモ

チュウシャクイシギ

ウミウ

ヒドリガモ

セイタカシギ

ヒメウ

アメリカヒドリ

ユリカモメ

ゴイサギ

オナガガモ

セグロカモメ

アマサギ

シマアジ

オオセグロカモメ

ダイサギ

ハシビロガモ

シロカモメ

チュウサギ

ホシハジロ

カモメ

コサギ

キンクロハジロ

ウミネコ

カラシラサギ

スズガモ

ハジロクロハラアジサシ

クロサギ

ミコアイサ

アジサシ

アオサギ

カワアイサ

カワセミ

ムラサキサギ

ミサゴ

ハクセキレイ

ヘラサギ

トビ

セグロセキレイ

コクガン

オオバン

モズ

オオハクチョウ

ウズラシギ

ツグミ

オシドリ

ハマシギ

スズメ

マガモ

ツルシギ

ハシボソガラス

カルガモ

キアシシギ

ハシブトガラス

コガモ

イソシギ

 

ヨシガモ

オオソリハシシギ

58


  

 

     

[ 掲載日 2009年02月10日 | 読みもの ▼ひとつ前へ戻る ▲ひとつ次へ進む ]