■ 「トキを見た!」地域の人の声 -佐渡市立行谷小学校-
2008年9月に放鳥されたトキは、佐渡や新潟のいろいろな地区を訪れています。
地域の人に、トキを見たときのお話を聞きました。
(聞き取り:佐渡トキファンクラブ)
●佐渡市立行谷(ぎょうや) 小学校教頭 村山稔さん

(トキ集会 トキの森公園にて)
新穂地区にある佐渡市立行谷小学校は全校児童84名の学校です。昭和30年代から野鳥愛護活動を行い、昭和40年、41年には、
水害で傷ついているところを保護された野生トキのフクちゃんとカズちゃんなど4羽を飼育しました。
トキが全鳥捕獲された後も野鳥愛護の活動を続け、平成からは「新穂の空に再びトキを」を合言葉にトキとの共生をめざした学習をしています。
平成20年には、環境省と(財)日本鳥類保護連盟が主催する「第43回全国野生生物保護実績発表大会」で、行谷小学校の取り組みの発表が、
最高賞の「環境大臣賞」を受賞しました。
トキ放鳥後は玄関に地図を設け、児童が通学や下校途中にトキを見たという場所に印をつけています。子どもたちは地図の前で
「うちの家の上を飛んだの。トキ色がきれいだったぁ」とか、印を指して「これは○○君の家の近くだよ」と話しています。

行谷小学校のトキについての学習は、3~6年生が「総合的な学習の時間」で取り組み、1、 2年生は野鳥観察会や生きもの調査などの全校活動で、3~6年生と一緒に学びます。全校がいい雰囲気で学習をしています。1年生のときから、 虫や鳥など生きものに親しみ、3~6年生がやっているのを見ています。泥がついても、生きものを捕まえることを、 子どもたちそれぞれが楽しんでいます。

トキについての学習は、「トキの生態調べ」、「地域の生きもの調査」、「野鳥観察会」、「トキ保護募金」、「環境によいお米作り」、
「トキの歌作り」、「島内外の学校や、中国の学校との交流」、「イベントでの発表」などがあります。学習では、
子どもたちの興味を大切にしながら、「問題を解決していく力」を育てています。問題を解決していく力とは、人と協力し学び合うなかで、
課題の設定・企画・追究・表現ができることです。
例えば、「ビオトープづくり」では、休耕田にビオトープを作ったあと、
子どもたちは生きものがよりたくさん住むにはどうしたらいいか考えます。そこで「地域の生きもの調べ」で、
生きものには水が重要ということを発見し、そこから生きものがくらしやすい環境を考えて、ビオトープをグラウンドに再現します。
その経緯や結果をまとめて発表し、みんなで意見交換をする、という学習の流れです。
行谷小学校の子どもたちは、素直で学習意欲もあります。しかし、以前は、自分の思いを発表したり、 知らない人に話しかけることには消極的でした。そこで、トキ解説員として、3~6年生が、トキを観察できる「トキの森公園・トキ資料展示館」 で、観光客や修学旅行生にトキのことを説明するボランティア活動をはじめました。ここでは、トキの生態や、佐渡の人々の願い、 トキ野生復帰について解説します。子どもたちはトキ解説員になって、初めて会う人に自分で声をかけて、 日ごろの学習の成果を分かりやすく説明しなくてはいけません。子どもたちは感想で「はじめは、観光客の方に話しかけるのに勇気がいったけど、 何回もやって自信がつきました。3年生にも教えてあげられました」や、「観光客の方に“ありがとう”と言われ、 人の役にたっていることが分かってうれしいです。夏休み中も解説員ボランティアに参加したいです」など、自信がついて、 いきいきとしています。子どもたちはさらに表現を向上させようとがんばっています。
今では、子どもたちは表現することに積極的になってきて、みずから発表の場に参加するようになりました。保護者や関係した人たちから、 行谷小学校の子どもたちが自信をもって積極的に発表する姿に感心したとの声を聞きます。
トキについての学習は、保護者、地域の農家の方、佐渡市役所、新潟県地域振興局、NPO団体など、多くの人たちの協力を得ています。
トキの学習が続き、よりよいものに発展しているのは、こうした地域の人たちとのつながりのおかげです。学校の教員は数年ごとに変わりますが、
地域の講師陣がしっかりしているので、教員が変わっても活動を続けられます。継続することによって、
トキ学習の内容の評価や質の見直しが図れます。地域の人との協力や信頼関係があるので、学習をより深めることもできます。
田んぼや川での活動のさいにも、地域の人々のおかげで安全の確保が図れます。一人一人がタマ網を使えるなど、
機材や資料が充実しているのも行谷小学校の伝統のおかげです。
学習に関わった方々には、評価や感想を子どもたちに直接伝えてもらいます。教員や保護者だけでなく、
それ以外の人たちから認めてもらうことで、児童は自信をつけています。

(中国の学校と交流 写真提供:行谷小学校)
トキについての学習で大切なのは、子どもたちに自然の素晴しさを伝えることだと考えています。環境問題を扱うと、
子どもたちは理想を語りがちです。学習の中では、すぐに環境問題に結びつけたり、理想の話だけにならないように気をつけています。例えば、
子どもたちは川について、「コンクリート3面張りをやめて自然に戻そう」と考えます。そこで「昔、佐渡の地域は、
水害に悩まされたところもあって、洪水を防ぐために3面張りにしたんだよ」ということも伝えます。
子どもの頃は自然に親しむ体験が不可欠です。子どもたちには、十分過ぎるほど、自然を楽しみ、親しむようにしています。
子どもの頃に自然に親しみ、自然を大切に感じるような経験が、大人になって環境のことを考え、社会的責任を果たすための下地になります。
トキや自然と関わって生きるのはすばらしいことです。そこには、人と人とのつながりもあるからです。子どもの頃の自然との関わりは、
子どもの将来にも、社会の未来にも大事なことだと思います。子どもたちは、卒業後、トキについての取り組みから離れるかもしれませんが、
トキについての学習での体験が、人生を豊かにしてくれればと願っています。

(地域の生きもの調べ 移動中)



