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■ トキ・メッセージ9 有限会社セブンシステム

有限会社セブンシステムは正明寺地区の7戸の農家が立ち上げた農業法人です。
正明寺地区は佐渡市新穂地区にあり、トキ野生復帰ステーションにもっとも近い集落です。 有限会社セブンシステムは地区にある農地30haのうち、16haを耕作し、トキのエサ場になる環境保全型農業を行っています。 今回はセブンシステムの経理を担当し、環境とトキと生きものを守る農業に力を注ぐ土屋新吾さんにお話を聞きました。
(インタビュー・文責:トキファンクラブ事務局)

●農業を続けるためのセブンシステム
セブンシステムの前身は昭和46年に島内初の生産組合として設立された正明寺生産組合です。 基盤整備によって1枚の田んぼの面積が大きくなりました。それまで使用していた小型機械では作業効率が悪く、 かといって大型機械を個人で買う余裕もありません。そこで集落の農家のうち13戸が集まり、個人で所有する機械を売り払い、 大型機械と施設の共同利用を中心として正明寺生産組合を立ち上げました。
その後、農家の高齢化や農業そのものが経済的に厳しくなりました。そこで、平成9年に有限会社セブンシステムを設立し、米の生産を引き受け、 地区の農地が荒れないよう、農業で食べていけるような努力をはじめました。
今は先祖から受けついだ田んぼを耕作放棄地にしないでほしいと、農地を預ける人も多くいます。
作業は地区の人を優先して雇用しています。米づくりだけでは年間雇用できませんから、稲の育苗や大豆の乾燥調整、 肥料となる米ぬかペレットを製造して冬場の仕事としています。

大型機械で
(秋、田んぼに米ぬかをまく作業)

●環境保全型農業への転換
50年ほど前は正明寺地区にも6羽ほどのトキが田んぼに飛んできていました。佐渡トキ保護センターができてからは、 人工繁殖が成功しトキが多くなると期待していました。
トキが再び佐渡の自然の中にくらすのなら、トキがすめる環境づくりが必要です。少しでも役立てるよう何か実行したいと思いました。
そこで取り組んだのが環境保全型農業です。
環境保全型農業は農薬や化学肥料の使用を抑えたり、環境や生きものに配慮する農業です。お米の収量は少し減りますが、 安心で安全なお米として評価して買ってもらえます。また、農薬を使わず、 生きものを殺さない農法で田んぼをトキのエサ場として提供することができます。
2007年現在、私たちは、正明寺地区にある農地の3分の2以上を管理し、耕作している全面積で環境保全型農業を行っています。 新潟県栽培基準より農薬を5割減らし、有機肥料を使った5割減農薬無化学肥料栽培。農薬は除草剤を1回のみ使用し、 有機肥料を使った8割減農薬無化学肥料栽培。そして無農薬・無化学肥料栽培を行っています。

メダカ生きもの調査
(生きもの調査。種類と数を数えます)

●生きものを育む
トキのエサ場となる田んぼづくりで大切なのは生きものを殺さないことです。農業と生きものが共生する環境を作ります。 田んぼの一部に大きな江を堀って、田んぼの水位が変わっても生きものがそこに逃げ込めるようにしてあります。
また、冬場田んぼに水がなくて生きものが死んでしまわないよう、全耕地で冬にも田んぼに水を張る冬期湛水を行っています。 休耕田はビオトープにして生きものを育てています。
トキと共生するためには生きものがいなくてはいけません。 江をつくって冬季湛水をしても農薬などをたくさん使用して殺してしまってはだめです。そういう思いを会社で共有して、 田んぼに草一本生えてないよりは、草が生えていてもまぁまぁいいじゃないかということにしています。
無農薬・無化学肥料栽培は取り組んで7年経ちますが、まだうまく草を抑えることができず、草がいっぱい生えます。草が生えると虫が出ます。 出た虫を私たちは殺しませんから、他集落の境にある田んぼは5割減無栽培にして迷惑をかけないようにしています。

冬季湛水
(冬期湛水)

●集落全体が変化してきた
トキが2008年に試験放鳥されることや、地区内に環境保全型農業の取り組みがあることで集落の人の環境に対しての考え方が変ってきました。 地区の集まりではみんなで環境についての話をしたり、環境をよくする取り組みを「ああしよう、こうしよう」と話し合っています。 「トキと共生しなくちゃ」から「トキと共生したほうがいいんだ」という考えになっています。
小中学生、PTA、老人クラブなどが一緒になって年2回生きもの調査をしています。集落の道を草刈りしたり缶拾いをしたり、 世代を問わず集落の人々が積極的に環境美化に取り組むようになりました。集落の反応は良く、子どもたちは楽しんでいます。 集落内のまとまりも今までよりよくなりました。

復元した田んぼ
(耕作放棄地になっていた田んぼを復元)

●環境保全型農業のお米によって人が来る
佐渡観光でトキを見にきたお米の問屋さんがセブンシステムに見学に来ました。 環境保全型農業の取り組みを知って、田んぼと施設を実際に見てもらいました。お米を注文してくれましたが、無農薬・無化学肥料栽培も、 8割減農薬のお米もすでに売り先が決まっていました。5割減農薬のお米でも欲しいというので合わせて600俵販売しました。 環境保全型のお米はたくさんの方に支えられています。
平成18年にはセブンシステムでつくる無農薬・無化学肥料のお米が天皇陛下への献上米に選ばれ、 代表の本多与八郎が皇居で行われた献穀献納式へお米の献上に上がりました。
正明寺地区は中山間地にあり、山からの清水を使ってお米を育てています。化学肥料を使わず、 米ぬかやくず大豆を発酵させてつくった米ぬかペレットを有機肥料にしています。おいしいお米だと評価されています。

献上米
(献上米)

●先進地や消費者との交流
佐渡には環境保全型農業に取り組む 「佐渡トキの田んぼを守る会」があります。平成13年の発足から私たちは会社ごと入会してともに環境保全型農業の勉強をし、無農薬・ 無化学肥料のコシヒカリ「トキヒカリ」を栽培しています。会では消費者や環境保全型農業の先進地などとの交流も行っています。 米ぬかペレットの作り方や、農法について教えてもらいます。お互いの経験をすべて出して、生きものを育む農業や、 環境保全につながる農業の取り組みについて時間を忘れて語り明かすのは楽しいことです。

米ぬかペレットづくり見学
(環境保全型農業の研修会で、セブンシステムの米ぬかペレット製造を見学する人たち)

消費者からは「佐渡に行ってみたい」「田んぼにいってみたい」という要望があります。また、「本当に農薬を使ってないのですか」 という質問もあります。セブンシステムは農業法人となっていますし、環境保全型農業を県で認定するエコファーマーも取得しています。 農薬の使用履歴などがわかるトレーサビリティの表示もつけています。そういう表示以上に、消費者と生産者が顔を合わせ、 実際の田んぼを見てもらうことが信頼につながります。トキのエサ場となる田んぼづくりや、環境保全型農業はお米のつくり手と消費者、 そして生産者同士が一体にならないと進んでいきません。安心安全を求める消費者の声と、 生産者の環境に対する姿勢を通じ合わせる交流会が今後の農業には必要だと思います。
そこで毎年、消費者が「草取りツアー」と題して佐渡に来て一緒に田んぼで作業をしたり、 私たちが島外へ行って消費者と意見交換をしたりします。私たちの田んぼは生きものを育んでいる農法だからお米が美味しく、 田んぼの生きものは安心安全の指標なのだといったことを紹介します。消費者からは「ドジョウはいつでも田んぼにいるのですか」 「トキが放されたら害鳥になりませんか」といった質問がされ、消費者がトキや田んぼの生きものに強く関心を持っていることに驚かされます。

草取りツアー
(島外から消費者が大勢来る草取りツアー)

●消費者は農業の協力者です
今佐渡島内でも島外産のお米がたくさん売られています。 でも島内の人には地場のものを買って欲しいと思います。そうすることで地元の農業や農地の環境を守ることにつながります。 佐渡で私たちが作っているお米がおいしい自信もあります。
消費者の方は生産者から安心・安全なお米を提供してもらってください。そういったお米を選ぶことで安心・ 安全な米づくりの支持や協力になります。
平成20年秋には佐渡にトキが放鳥されます。どうぞトキを見に佐渡に来てください。


 

[ 掲載日 2008年02月12日 | 読みもの ▼ひとつ前へ戻る ▲ひとつ次へ進む ]